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RUNNET TRAIL コラム

富士の裾野で鍛える最強トレイルランナー

宮原 徹 さん
第6回
北丹沢12時間山岳耐久レース(2008年)優勝

宮原 徹 さん

坂道練習で筋力アップ

 2008年7月に開催された北丹沢12時間山岳耐久レースは気温が30℃を超え、完走率も大会史上初めて50%を切る厳しいものとなった。そのレースで2位に10分差をつけて優勝し、大会2連覇を果たしたのは宮原徹さん(当時26歳)。
 宮原さんが所属する、滝ヶ原自衛隊といえば、2006年まで富士登山駅伝で8連覇するなど、無類の強さを誇る。宮原さんもその主力メンバーのひとりだ。
 中学時代から陸上長距離選手として活躍してきた宮原さんは、自衛隊に入ってからは、スポーツエリートが進む自衛隊体育学校で3年間、競技に集中し、3年前から現在の滝ヶ原駐屯地に配属され、通常勤務に就いた。
 滝ヶ原駐屯地は、富士山のすそ野に位置するため、走るコースは、上りか下りの坂しかない。
「最初は、ジョグするだけでも筋肉痛になったくらいです(笑)。徐々に慣れてきたのですが、気がつくと(身長172cmで)53kgだった体重が、56kgに増えていました。かなり筋肉がついたという実感があります」
 平地だと、自分自身で頑張って追い込んでいかなければならないが、坂道だと自然に追い込めるのがいいという。
「自衛隊体育学校時代から考えると、練習量も質も半分になってしまったのに、ここに来て4カ月後に5000mの、1年後には10000mの自己ベストが出て、自分でも驚きでした。これは坂道での練習効果だと思います」

日常から富士山をトレーニングで走っている

日常から富士山をトレーニングで走っている

通勤ランがベース、週末はトレイルへ

 宮原さんの一日は、自宅から駐屯地までの通勤ランで始まる。着替えなどの荷物を背負い、約7kmの距離を40分ほどかけて走る。それほど速いペースではないように感じるが、自宅から駐屯地までは300mも高度が上がる。行きは上り続け、帰りは下り続けることになる。
 朝8時から17時までの勤務中は、射撃や野外訓練などに従事し、ランニングそのものはほとんど行っていない。
「通勤ランをした日は、帰りも走って帰宅し、そうでない日は、帰宅後、夕食までの2時間、自宅の周辺で25kmほどキロ4分半ペースで走ります」
 ハーフの自己ベストが1時間04分49秒の宮原さんにとって、ジョグに近いペースだという。
 滝ヶ原自衛隊の場合、富士登山駅伝のメンバーも、普段はそれぞれの任務についていて、1カ月前からチームとして練習を始めるという。宮原さんの場合はここ3年、4区を担当していて、担当区間のコースを追い込まない程度のスピードで走るようにしている。
 トレイルの練習は週末に限定される。神奈川県と静岡県の県境にある金時山で20kmを2時間かけて走るのが定番。北丹沢などロングのレースに向けて長く走る必要があるときは、芦ノ湖畔までの箱根トレイルで30〜35kmを4時間程度かけて走ることもある。
 ロードとトレイルを合計すると、月間300~500km程度走っていることになる。訓練が早朝から夜遅くまである日を除いてほぼ毎日走っている。
 富士登山駅伝が終わって、11月に開催される中部実業団対抗駅伝までは、インターバルなど、トラックでスピード感覚を高めるトレーニングに切り替えていく。
「山ばかりで練習していると、遅いスピードに慣れてしまうので、ロードで速い動きを取り戻すことも大事です」

※『1冊まるごとトレイルランvol.2』(2008年8月21日)掲載のものをそのまま転載しています

滝ケ原自衛隊のチームメイトたちと競い合う

滝ケ原自衛隊のチームメイトたちと競い合う

宮原 徹 さん

宮原 徹(みやはら・とおる)


1982年生まれ。滝ケ原自衛隊所属。2006年の富士登山競走で2時間32分40秒の驚異的な大会新記録を樹立。以後、国内のトレイルレースでは無敵を誇り、現在日本最強の呼び声の高いトレイルランナー。世界の強豪が集うキナバル国際クライマソンでも2008、2009年と準優勝を果たしている。
取材・文/石田高広
写真/青山義幸
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