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2010年7月22日 

アメリカの超大物トレイルランナー
スコット・ジュレク特別インタビュー

シアトルにあるブルックス本社でインタビューに応じてくれたスコット・ジュレク

 ウエスタンステイツ(160kmトレイルレース)7連覇、スパルタスロン(246km)3連覇など、世界的なトレイルレース、ウルトラレースでことごとく優勝をさらっているアメリカ人ランナー、スコット・ジュレク。多くのトップ選手たちから恐れられているとともに、その気さくな人柄から、多くの人々に愛されているランナーでもある。そのアメリカを代表するトレイルランナーは、普段どのようなトレーニングをしているのか? そして心の内に秘めたトレラン哲学とは?

――学生時代は足が遅かったそうですが、それは本当ですか?
 そう、学生時代はクロスカントリーのチームに所属していたけど、本当に遅くてね。でも1994年に友人に誘われて出場した80kmのトレイルレースで2位に入ることができた。それが私のトレイルランナーとしてのキャリアのスタートだったんだ。

――いつもどのくらい走っているのですか?
 多い時で1週間に約160~200km。240km走った時もあるよ。

――ウエスタンステイツはトレイルレース、スパルタスロンはロード区間が長いレースです。それぞれトレーニングは変えているのですか?
 ウエスタンステイツの前はトレイルを50~60km走るんだ。1300mのアップダウンを3回繰り返すハードなコースさ。それを2日続けて走ると、110~160km走った時のような負荷を身体に掛けることができる。スパルタスロンの前はワシントン湖の周りで80km走。7時間くらいかけて走るよ。普段はシアトルに住んでいるけど、ボウルダーでもよくトレーニングしているよ。日本人選手もいっぱいいるけど、走るには最高の環境だね。

――今までで一番ハードだったレースは?
 2010年に行われた24時間走かな(266.01kmで準優勝。優勝は273.53kmを走破した日本の井上真悟さん)。1.2kmのコースをぐるぐる回るんだけど、それが精神的にきつかった! 正直あまり楽しくはなかったけど、それもチャレンジのひとつさ。

――あなたはベジタリアンだと聞いています。いつからですか?
 1999年、初めてウエスタンステイツで優勝した年からかな。理由は健康のため。昔は1週間に3回はファーストフードを食べていたけど、アメリカの有名なドクターの本を読み、このままではいけないと思って、ベジタリアンになった。肉だけでなく、チーズやミルクのような乳製品もやめたんだ。そうしたらトレーニング後の回復も早くなって、もっと走れるようになったよ。よく食べるのは玄米かな(レース中もおにぎりを持って行くほどお米好き。日本のランナーに教えられたらしい)

――普段は何をしているのですか?
 フィジオセラピスト(理学療法士。ケガや障害のある人に対し、医師の指示の下、一部の治療行為を行う)の仕事をしているよ。その他にも原稿を書いたり、20人くらいのランナーのトレーニングを電話で指導したりもしている。(日本でも販売されている)ブルックスとも一緒に仕事をしているよ。「カスケディア」というトレイルシューズの開発にずっと携わっているんだ。正直かなり忙しいね(苦笑)。

――あなたは様々な過酷なレースで優勝し、今でも挑戦し続けています。そのように高いモチベーションを維持し続ける源になっているのは何なのでしょうか?
 私はレースのなかには、2つの冒険があると思っているんだ。ひとつは雄大な大自然のなか、自分の身体ひとつで何を達成することができるのか。そしてもうひとつは、つらく厳しい状況に陥った時、いかに心を強く持ち、チャレンジを続けられるのか。2005年にバッドウォーター(50℃近い気温の中で行われる217kmのレース)に出た時は、96km地点で嘔吐し、1度動けなくなった。ウエスタンステイツでも、80km地点で足を挫いてしまったことがある。それでもあきらめずに走ったら優勝できた。レースには良い時だけじゃなく悪い時もあるけど、それを乗り越えることこそ大切なんだ。それは5~6時間かけてフルマラソンを完走する人も、そして人生も同じだと思うよ。自分の運命は自分でコントロールしなくちゃならない。ランニングはそのやり方を私に教えてくれたんだ。

――トレイルランを始めたばかりのランナーに一言メッセージを
 トレイルを怖がる人もいるけど、1度チャレンジしてほしい。最初は簡単なところでいいから。ストライドを小さくして、細かいステップを刻んでいくのがコツなんだ。そして何より大切なのが、トレイルランを楽しむことさ。

【プロフィール】
スコット・ジュレク(Scott Jurek)
1973年10月26日生まれ、188cm、75kg。1999年から2005年まで、ウエスタンステイツ7連覇。2006年から2008年まではスパルタスロン3連覇。幼少期に母親が難病にかかり、若い頃は苦労の連続だった。そのストレスから逃れるために熱中したランニングで、一気にトレイルとウルトラレースのトップランナーへ。現在は8月末に行われる「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」へ向けてトレーニング中。レース中は日系人のガールフレンドがスコットをサポートしてくれる。フルマラソンのベストは2時間38分。

ロードでもトレイルでも一流なのがスコットのすごいところ

筋骨隆々というよりも、カモシカのようにスラリと長い、引き締まった脚


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