リレーエッセー 達人たちのトレランコース
毎月トレイルの達人たちがリレーで、独自のトレーニング法や、練習中のエピソードをまじえ、大好きなトレーニングコース(トレイル)を紹介してくれるコーナーです。
渡邊千春さん

「静岡~長野県 秘境椹島、赤石岳、荒川岳周回コース」

息子とのトレラン夏合宿は1泊2日のロングトレイル

今月のナビゲーター: 渡邊千春/トレイルランナー

静岡~長野県 秘境椹島、赤石岳、荒川岳周回コース

 3年前から今年小6の息子と「夏合宿」と称し、日本アルプスのメジャーなコースを山小屋泊を入れて走っています。のんびり山に親しむのが目標ですが、追い込まなくても3000mを超える高地に長時間滞在することによるトレーニング効果は大きいと感じています。常にがんばる息子に本当にがんばることを教わることも少なくありません。
 今年の合宿の舞台となった赤石岳、荒川岳の周回コースは危険箇所もほとんどないため全般的に走れるコースです。天候にも恵まれ、予定通り1泊2日で周回しました。
 このコーナーにも登場した望月将吾選手の職場でもあるこのコースは、スタート・ゴールの椹島(さわらじま)までバスを利用しなければならないので、スタートはより早い時間のバスに乗り、ゴールは遅くても14:00の井川行き最終バスに間に合うようスケジュールを組みます。

 初日は、椹島から赤石小屋までの上りです。平らな区間が少ないのですが、距離が短いのと赤石小屋まで5分の1ずつ距離表示があるので、上りが苦にならず椹島までの車酔いに苦しむ息子でもコースタイムの半分の2時間半ほどで午後4時前に赤石小屋に到着しました。ナラやシラビソの樹林帯が強い日差しをさえぎってくれたことも幸いでした。
 到着してからは、山小屋近くのベンチに腰掛け、聖岳に日が落ちる様子を眺めながら、ほかの宿泊客とのおしゃべりです。聖岳の写真を撮ったり、山々をバックに乾杯したり山をテーマに人それぞれ楽しむ姿に接するのは見ているだけで楽しめます。

 2日目は、赤石岳から荒川三山を経て椹島までコースタイムで15時間近いロングトレイルです。赤石小屋を朝6時前に出発し、緩く上ると富士見平に到着です。360度のパノラマが広がり、南アルプスでも仙丈ケ岳、北岳あたりから見るよりも大きく富士山が見えます。赤石岳直下の谷を越え、複数ある水場を過ぎると赤石小屋分岐点までのきつい上り、そして赤石岳山頂までさらに10分ほど上ります。小赤石岳までの急登を上りきると、しばらく上り下りのアクセントがなくなります。息子に限らずパーティーを組んで山に入るよさは、こういったダレるポイントでおしゃべりしながら距離を稼げることです。

 荒川小屋までのトラバース道を過ぎると荒川三山前岳までの上りです。近づいてみると丸みを帯びた山容に反し、距離、傾斜のいずれをとってもこのコース随一の難関です。足元に滑りやすい砂が多い斜面ですが、このような滑りやすい上りでは重心の移動を意識するトレーニングに最適です。前岳近くの中岳から悪沢岳の登り口まで下りきった所からコースタイムで60分ちょうどの山頂までの上りでタイムトライアル(TT)をすることにしました。ロングトレイルも後半になると飽きずに続けられる工夫が必要です。TTはそういった工夫のひとつです。上りの途中で、悪沢岳から下ってきた柳下大くんに出会い、おしゃべりしている大人をよそにTTを続行した息子は16分で山頂に着いたと胸を張っていました。この先、千枚岳はとても変化に富むポイントですが、その先の椹島までの下りは、景色が木々にブロックされ(同時に日差しもブロックしてくれているのですが人間は本当に都合のいい動物です)、最終のバスの時間も迫り、心理的にも非常につらい走りになりました。電線の点検のための道のようなところを下りきると、ようやく椹島に到着です。

 南アルプスの人気コースでもあるこのコースは、登山道がしっかりしていてほかのパーティーとすれちがう際に気をつけなければいけないポイントは赤石岳直下の谷越えや、千枚岳を除き非常に少ないです。自分のペースを維持できるお勧めのロングトレイルです。

静岡~長野県 秘境椹島、赤石岳、荒川岳周回コース

渡邊千春さんのトレーニングコースは、LatLongLab「猛レース」で見ることができます。このコースを走ったことのある人は、自分のタイムを登録して、ネット上で渡邊さんとバーチャルランを楽しめます。実際に走ってみたら、ぜひ登録してみてください。

地図提供:LatLongLab

渡邊千春さん渡邊千春/トレイルランナー

外資系金融企業で働く多忙なビジネスマンランナー。2000年ごろからダイエットをきっかけに走り始め、数多くのトレイルレースで活躍。08年OSJトレイルレースシリーズ優勝、同じく日本山岳耐久レースでは7位で、40歳以上の最高記録を更新。小学校6年生の息子さんもトレイルレースへも参加しトレイルを楽しんでいる。

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次回のナビゲーター:09年信越五岳トレイルランニングレースで、女子の部優勝の林田智美さんです。渡邊千春さんからのご紹介です。