RUNNET TRAIL コラム
トレラン・レースリポート
- inov8 CUP 第7回 美ヶ原トレイルラン
開催日:2017年7月1日 (土)
開催地:長野県(長和町)
距離:80km、45km、14km
80km 完走者665人/出走者723人
45km 完走者387人/出走者398人
14km 完走者265人/出走者268人
大雨で直前にルート変更!
最悪な天候のなかでも、温かな最高のレースに。
リポート/ 生田 貴裕さん
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美ヶ原トレイルランに参加するのは、昨年に続き2回目。昨年出場して、テクニカルな部分が少なく、稜線や牧場を気持ちよく走れる区間が多いという印象がありました。
普段は同じレースに続けて参加することのない自分ですが、昨年、ゴール5km手前の「南の耳」から望む八ヶ岳や白樺湖の絶景が忘れられず、2年連続のエントリーを決めました。
前日の受付・ブリーフィングを終え宿で夕食をとっていると、ポツポツと屋根を叩く音が聞こえてきます。怖々と窓を開けてみると、最も恐れていた雨。その雨音は次第に強くなり、不安は募るばかり。床に就いてもなかなか寝付くことはできませんでした。
レース当日は午前2時に起床。雨は一向に降り止む気配はなく、コースの大幅短縮・最悪はレースの中止も覚悟して会場に向かいました。
会場に着くとアナウンスがあり、レースの前半部分が林道になり、74kmのコースに変更されたと説明を受けました。中止にならなくてホッとした気持ちとともに、この天候の中、無事にレースを走り切れるかという不安を抱えたまま、スタートラインに立ちました。
【生田さんの装備(※必携品以外)】
経口補給液の粉末(水に溶けるタイプ)×6個、チョコレート×5個、ジェル状のエネルギー補給食×2個、簡単な応急処置セット。「エイドまでの距離があり、暑くなることも予想されたため、脱水しないように気を付けました。エネルギー補給に関しては、エイドでしっかり補給するようにして、携帯品はごくごく最小限に。結果的に、本来の距離(80km)だったらもう少し補給食が必要だったかなと思います」(生田さん)
スタートから一気に急坂上り。振り返って仲間たちの光を見たら不安が吹き飛んだ!
エイドの温かなおもてなしで、心も身体もエネルギーをばっちり補給。
スタートは、まだ夜が明けない午前4時。まずは、スキー場のひたすら上り。目覚めきっていない身体に、標高差400mの急坂。嫌でも心拍数は上がり、身体がレースが始まったことを認識します。ほぼ上り終えたところで、ひと息つきながら上ってきたコースを振り返ると、漆黒の闇の中に浮かぶヘッデン(*)の群れ。こんなにもたくさんのランナーが一緒に頑張っていると思うと、スタート時の不安がバカらしくなり、急に元気が湧いてきました。
*ヘッデン…ヘッドライトのこと
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心身ともにスイッチON。いったん下ってから中間点までは、雨でも軽快に走れる林道中心のコース。前半にもかかわらず途中からは単独走となり、霧がかった幻想的な山の中、シトシト降り続く雨音だけを聞きながら、淡々と歩を進めます。
長い林道区間を過ぎ、しばらくロードの上り下りを終えると、ほぼ中間点にあたる和田宿のエイドステーションへ。昨年は、ここで一気に暑さが増しそれと闘いながら進んだのですが、この日は、冷たい雨に打たれ冷え切った身体に、名物の田舎団子(?)をはじめ、そうめん、蕎麦などの心のこもったおもてなし。おばちゃんたちの温かい声援も受け、心も身体もエネルギー満タン! 前の選手との差も確認し、後半の巻き返しを誓います。
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中間地点、和田宿で気合を入れ直す。長くつらいはずの10kmの林道が選手同士のエール交換ゾーンに。
この和田宿がコース中で最も標高の低い地点で、残りの35kmで1000mほど上る後半勝負のコース設定。昨年出場してそのきつさを実感していたので、ここからがレースの始まりだと考えていました。
「いざ、勝負!!」
40kmから長門牧場までの15kmで、700m上ります。特に、変化のない緩やかな上りをひたすら黙々と「走らされる」10kmの林道は、昨年最も苦しめられた区間。しかし、今回はコース変更となったことで、往路の選手とすれ違いとなり、お互いに「頑張れ!」とエールを交換しながら進むことができました。たくさんの元気をもらったおかげで、昨年はとても長く感じたこの区間も、あっという間に抜けることができました。ここで6人をパス、がぜんやる気が出てきます。
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ぬかるみと闘った終盤戦。雨に打たれながら励ましてくれるスタッフに胸が熱くなる。
これもまた美ヶ原のトレイル。
長門牧場のエイドステーションを抜けると、残りはアップダウンを繰り返しながら中央分水嶺を進む林道中心のトレイル。天気が良ければ気持ちよく走れるコースなのですが、降り続く雨の中でコースはぐちゃぐちゃ。しかし、昨年晴れていても泥沼にはまり苦闘した所も、地元の方々の丁寧なコース整備のおかげでスムーズに通過。昨年からのコースの「進化」に感謝しながら前進しました。
泥に足をとられそうになる下り坂。 より集中して駆け下りる! |
冷たい雨、ぬかるんで走りにくくなったコースを、ひとり孤独に進む最終盤。
そんな状況でも、雨に打たれながら応援してくださるスタッフの方々、エイドでいただく励ましの言葉、補給食……いつもなら、順位やタイムを意識して追い込む場面ですが、「こんな状況だからこそ、よりその優しさ、温かさを感じられるのかな…」そんなことを考えながら、最後は走らせていただきました。
アップダウンが続く中央分水嶺を進む |
最悪な天候の中でも、最高のレース。タイムや順位、眺望やコースだけではないトレイルレースの楽しさ、温かさを感じることのできた今回のレース。晴天に恵まれた昨年とは違った達成感を胸に帰路につきました。
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たっぷり走れる絶景コース。ウルトラランナーにおすすめです!
この「美ヶ原トレイルラン」は、天気が良ければ、茶臼山、美ヶ原から眼下に広がる景色、殿城山から南の耳、と標高2000m近い稜線上から望む景観はまさに絶景。ウルトラをされるような方にはもってこいの、たっぷり走れるレースではないかと思います。うまく走るポイントは、上り中心で暑くなる後半に備え、前半は体力を温存し、ラストの大門以降でしっかり走る。そのための練習ができていれば良いのではないでしょうか。また、高地ならではの天候の急変や、街に下りると一気に暑くなることを想定し、どんな状況にも対応できる準備ができるとベターです。仲間と来て前泊したり、後夜祭もあるので、レース会場で打ち上げ、という楽しみ方も。大会の運営も素晴らしく、おすすめのレースです。
- リポート/生田 貴裕さん(34歳)
鍼灸・マッサージ師。この夏、神奈川県から鳥取県へ移住予定。
中学高校時代は陸上部に所属。6年前よりランニングを再開。マラソンの練習として4年前に始めたトレイルランが、今ではメインになりつつある。「トレイルランの練習をするようになり、故障しなくなりました。来年は100マイルレースに出場したいです」(生田さん)
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