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RUNNET TRAIL コラム

日本の第一人者「世界の鏑木」は階段、水泳、ジムも積極的に活用!

鏑木 毅 さん
第1回
OSJおんたけウルトラトレイル100km(2008年)優勝

鏑木 毅 さん

通勤ランとマシントレーニング

 7月20日に開催された「OSJおんたけウルトラトレイル100km」。強豪ひしめくこの大会で、8時間26分44秒というタイムで優勝し、あらためて「ロングの第一人者」を強く印象づけた鏑木毅さん(当時39歳)。彼の強さは、どんな練習によって支えられているのだろうか?
 群馬県庁に勤める鏑木さんは、多くのビジネスマンと変わらず、週5日、朝8時半から夕方5時半まで、さらに残業も含めると、1日の大半を職場で過ごしている。「土日が休日ですが、1日はロードでの練習にして、トレイルで走るのは、通常1日だけですね」
 仕事のある平日は、通勤ランとスポーツクラブでのトレーニングが基本だ。
「普段は車で通っていますが、週2〜3回は通勤ランをやっています。自宅から職場までは約10km。通勤ランの日は往復とも走ります」
 そんな日は、朝6時半に起床。食事はせずに、出勤の支度をして7時過ぎには自宅を出る。ペースはキロ5分程度。8時前には職場に着き、シャワーを浴びて、サンドイッチなどで簡単に朝食をとると、間もなく8時半の始業となる。「退庁後の帰宅ランは、時間とその日の体調によって、短いときで自宅までの最短距離 10km、もっと走りたいときは、遠回りをして20〜30kmくらい走ることもあります」

2008年の「OSJおんたけウルトラトレイル100km」のゴールシーン。この1カ月後には「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」で4位に入り、世界に鏑木毅の名を轟かせた。

2008年の「OSJおんたけウルトラトレイル100km」のゴールシーン。この1カ月後には「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」で4位に入り、世界に鏑木毅の名を轟かせた。

トレッドミル練習と週2回の水泳

 鏑木さんのトレーニングで興味深いのは、積極的にスポーツクラブを使っている点。比較的筋疲労が残っている場合は、通勤ランはせず、退庁後の2時間ほどをスポーツクラブで過ごすのが習慣だ。といっても筋トレを行うわけではない。
「有酸素系のマシンを使います。トレッドミルやステップマシンなどですね」トレッドミルを使うより、戸外を走ったほうが気持ちがいいのでは……?「トレッドミルだと、目的に特化した練習ができるんです。例えば、傾斜をつけて走れば、上りだけの練習になります。ところが、同じ上り練習を山に入ってやろうとすると、その後には必ず下り練習がついてきます。筋疲労を回復させたい時などには、避けたいですね」
また、ステップマシンは、山に入れなくなる冬場に、大腿部強化用によく活用している。「坂道のトレーニングが減ると、大腿部の筋肉が落ちます。これは、トレイルランでは、ダイレクトに記録に響きます」
マシントレーニングの後は、週2回、クロールで1000mほど泳ぐ。水泳は、脚の筋肉の疲労回復を早めながら、心肺機能を向上させるトレーニングになる。筋肉は使えば必ず疲労し、回復までに時間がかかる。しかし、心肺系は、すぐに回復するという。
「走ることばかり考えず、水泳や自転車など、ランニング以外の有酸素運動をうまくとり入れると、筋疲労を早く回復させながら、トータルで心肺機能を強化できます」

2007年に「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」に挑戦し、12位。このレース後に、100マイルレースを意識したトレーニングに本格的に取り組む

2007年に「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」に挑戦し、12位。このレース後に、100マイルレースを意識したトレーニングに本格的に取り組む

15分間スピード練習、職場で行う階段上り

 フルタイムの仕事をもつ以上、ときには忙しさで走る時間がとれないこともある。ただ、練習ゼロの日はなるべくつくらないようにしている。
「15分間あればトレーニングします。スピード練習なら十分できますよ。特に最近、スピード的な筋力が落ちないよう、意識して入れるようにしています」
 たとえば、1000m1本とか、5000m1本といった練習だ。「特に距離を決めずに、スタートから3分間だけ、思い切り追い込む、といった練習でもいいと思います」
長距離の練習ばかりしていると、どうしても身体のキレが悪くなる。動きの反応をよくし、脚の回転数を上げられるようにするためにも、ハイスピードな練習を取り入れるべきと考えている。また、水平方向だけでなく、垂直方向のトレーニングも重視している鏑木さんにとって、階段上りも大事なトレーニングだ。
「職場が32階建てなので、この階段を上り下りするんです。上りは5分で下りは3〜4分。これも短時間練習のひとつです」
エレベーター待ちのときにはストレッチを行うなど、職場では「変な人」と思われている可能性が高いというが、
「短時間練習のおかげで、忙しくても、月のうち練習ゼロの日は3日程度なんです」

※『1冊まるごとトレイルランvol.2』(2008年8月21日)掲載のものをそのまま転載しています

2008年の「日本山岳耐久レース」では、本調子とは程遠い中で2位に食い込んだ。

2008年の「日本山岳耐久レース」では、本調子とは程遠い中で2位に食い込んだ。

鏑木 毅

鏑木 毅(かぶらき・つよし)


1968年生まれ。日本のトレイルランニングシーンの第一人者。「富士登山競走」「北丹沢12時間山岳耐久レース」「日本山岳耐久レース」など、数々のレースで優勝。2009年にはプロトレイルランナーとしての活動をスタート。「ウエスタンステイツ」(アメリカ)2位、「ウルトラトレイル・ド・モンブラン」(フランス、スイス、イタリア)3位と、世界的なビッグレースでも表彰台に上がっている
写真/松岡幸一、小野口健太
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