田中正人さん監修 トレイルランの始め方
第9章
ステップアップ編2~レースに出よう~
トレイルランニングは、ひとりでも仲間と一緒でも、自然の中で走ること自体が楽しい。
ちょっとトレイルでの走りに自信が持てるようになったら、レースに参加してみましょう。
いつも走っているトレイルもレースのトレーニングを意識して走れば、身体の使い方やペース配分などで新しい発見があるはずです。
レースの種類
 現在のところ国内で開催されているトレイルレースは、まだそれほど多くありません。それでも、それぞれの大会のコース設定によって向き不向きなどが違ってくるところが面白いですよ。
【レースのタイプ】
◆縦走タイプ

アップダウンのある、縦走タイプの高低図イメージ

 「日本山岳耐久レース」などがこのタイプに当たります。山なみの頂上を結んでいる縦走路をたどって、ノコギリ歯状のアップダウンを上り下りします。距離の長い長時間のレースになることも多い。
◆ピークハントタイプ

山頂を目指す、ピークハント高低図イメージ

 「スカイレース」などとも呼ばれる、高山の頂上を目指して駆け上がるレース。上って下るが基本ですが、「富士登山競走」のように頂上ゴールの設定も。
◆丘陵タイプ

なだらかなトレイルを走る広陵高低図イメージ

 丘陵地の林間などに設けた比較的なだらかなコースを走るレース。コースの多くの部分を走ることができ、スピードを出せるのが特徴。「三河高原トレイルランニングレース」などがこれにあたります。
【レースの距離】
  レースの距離は10km程度から、50kmを越えるものまでさまざま。トレイルレースでは完走の難易度は距離だけでなく、コースのレイアウトによっても大きく異なってきますが、最初は30km程度までのレースにエントリーしてみるのがいいでしょう。長い距離のレースの過酷さが取り上げられがちですが、適度に走りがいがありスピード感のある20~30kmのレースも面白いですよ。
レースの準備

ザックの容量と相談して、装備を判断したい

あらかじめ下見をするだけで、レースでのペース配分はしやすくなる

【試走】
 レースでの成績を考えるならば、事前にコースを試走しておくことはとても有利になります。コース図では分からない、トレイルの細かなアップダウンや路面状況などを実際に走って確かめておきましょう。自分にあった最適なペース配分なども、試走してみれば分かります。レースによっては、大会以外の時期のコースへの立ち入りができないこともあるので確認が必要。 コースを知ることでペース配分しやすくなります
【装備】
 山岳耐久レースなどでは、選手が携行しなくてはならない装備がルールで決められていてスタート前にチェックが行われることもあります。少なくとも、大会の規則を満たす飲料水、食糧、ライト、雨具などを用意しましょう。レース前のトレイルランで、どのくらいの水や食糧が要るかや、用具の使い方などを試しておきましょう。トレッキングポールの使用は、大会によって可能な場合と禁止されている場合とがあります。
 比較的距離が短く給水のしっかりとした大会ならば空身でも走ることができます。給水所の数や、自分の予測タイムなどから、水を持つ必要があるかどうか判断しましょう。
レース本番の心得

ハセツネのように2000人規模の大会は目標タイムごとに並ぶ場所を分けている

トレイル上にはコースを示す表示板もあるので、1人で走るより道迷いのリスクは格段に低くなる

【作戦】
  トレイルレースの楽しさは、トップランナーから初心者までレベルの違いはあっても、それなりの「作戦」があることです。上りを歩いて力を残すのか、それとも走ってタイムを短縮できるのかなど、自分のタイプやコースを分析して走ることが求められるのです。この点は、基本的にイーブンペースでの走りが要求されるロードレースよりも複雑で面白い。
【スタート ポジション】
  参加人数の多い大会では、スタート位置は「10時間」「12時間」といったように、自己申告の目標タイム順になっていることが多い。自分の走力から予測して無理のない位置からスタートしましょう。また、スタート直前には混雑するので、早めにスタート位置に着くように心がけましょう。
【表示・チェックポイント】
  ほとんどのトレイルレースでは、コースを示す矢印などが掲示されている。道に迷うことは少ないが、疲労などで思わぬコースミスをすることもあるので、表示には注意を払いましょう。また、長距離のレースではチェックポイントが設けられていて、ナンバーカードやチップによるランナーの確認が行われます。
【リタイア】
  チェックポイントでのタイムオーバーやトラブルなどで、リタイアするときにはバスなどで会場までの輸送があることと、自力で戻らなければならない場合とがあります。いずれにしろ、山道をある程度以上の距離は歩くことになるので、余裕を持った判断が必要になります。
【マナー】
  ほとんどの場合、一般のハイカーも歩く登山道などを使ってレースが行われます。レース中といえども道をゆずり合う、すれ違うときに事故のないように速度を落とすなどの配慮は必要です。狭い登山道でほかのランナーを抜くときにも、トレイル以外の部分を走ったりしないこと。
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プロフィール

監修/田中正人
(たなか・まさと)

内坂庸夫(うちさか・つねお

1967年生まれ。第1回日本山岳耐久レース(ハセツネ)の優勝者。その後プロアドベンチャーレースチーム「EAST WIND」を率い、世界各地のアドベンチャーレースで活躍。ハセツネCUP安全走行講習会をはじめ、各種のトレイルランセミナーを実施している。
http://www.east-wind.jp/

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