田中正人さん監修 トレイルランの始め方
第5章
走ってみよう編1~安全に走るために~
山地図のコピーに全情報を書き込む

地図は汗で濡れないようにジップロックなどに入れておこう

 山を走る上で一番大事なのは時間管理です。
 ロードでは夜でも道は明るいし、たとえ道に迷ったとしても、人に尋ねたり、交通機関を利用することができます。しかし山中の夜は真っ暗。もちろん人通りはほとんどありません。予定通りの時間で走れているのか、きちんと時間管理をしておかないと、遭難してしまう危険性だってあるのです。
 私が時間管理に利用しているのは、ここからここまで歩くと何分かかるのか、その目安が記入してある山地図です。トレイルランの場合は、そこに記入された時間の40~45%を基準として、予定を立てています。また山に行く時は、地図そのものではなく、コピーを持っていくようにしています。そこに帰りのバスの時間など、必要事項を書き込むことで、1枚の紙で全ての情報を管理することができるのです。
 ぜひ行ってほしいのが、分岐や山頂など、要所となる場所でタイムをとり、それを地図のコピーに書き込んでいくこと。よく行くコースならば、次からはより正確な予定をたてることができ、トレーニング目的ならば、自分の調子を測るバロメーターの役割もしてくれます。トレイルランから帰ってきても、地図のコピーは捨てずに保管しておきましょう。
低血糖になりやすいのは、競り合いと「あとちょっと」
例えばこんなもの
エネルギージェル
最もポピュラーな補給食。複数個持っていき、30~60分ごとに補給したい。専用のフラスクに入れていけば、ゴミを出さず、補給する量も調整できる
アミノ酸ドリンク
補給食だけでなく、もちろん給水も携行する必要あり。ハイドレーションパック、ボトル等を使うと便利。中は水でもよいが、アミノ酸の含まれたドリンクにすると、疲労した身体の回復を早めてくれる
パンやおにぎり
腹もちを良くするためには、ある程度のボリュームも必要。長めの距離を走る時などは、持っていきたい。山頂で食べると一段とオイシイ!?
 山を走る時は低血糖状態(ハンガーノック)にも気を付けなければなりません。補給食は必ず携帯しましょう。基本は「早め」「こまめ」「計画的」。あらかじめ「○分おき」と、時間を決めてしまっても良いかもしれません。
 低血糖になりやすいケースというのが、「あとちょっとだから大丈夫」と思ってしまうとき。たとえ距離は短くとも、低血糖状態になってしまうと、そこで動けなくなってしまいます。レースでもあとちょっとのところで食べておくことが大事です。
 もうひとつ危険なのが、競り合っているときです。私も低血糖状態は3回経験していますが、そのうちの1回は、比較的手軽にみんなが走っている高尾山~陣馬山(東京)のトレイルでした。その時は仲間と一緒に走っていて競り合いになってしまい、補給食をとるのを怠っていたのです。
 低血糖状態は、一度なってしまうと、なかなか回復しません。私は3時間寝ていたことがありますが、それでも回復しませんでした。血糖値を上げるには食べなくてはなりませんが、それでもすぐには回復できません。そんな状態にならないためにも、まずはしっかり食べることです。
 食べるものについては、トレイルだからといって、ロードと特に変える必要はありません。逆にロードで食べてみて、問題の無かったものを山にも持って行く、と考えたほうが良いでしょう。慣れないものを食べて、万が一インシュリンショック(1度に多量の糖を摂取することで血糖値が急上昇し、反動でそれを抑える働きのあるインシュリンが大量に分泌されることで、逆に血糖値の低下によるだるさやパフォーマンスの低下を招いてしまうこと)を起こし、行動できなくなってしまうと、山では危険です。またロードよりも時間がかかってしまうケースが多いので、必然的に持って行く量は多くなります。
 ちなみに私はレースならば、市販のエネルギー飲料だけ。普段はパンやおにぎりも持っていきます。
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プロフィール

監修/田中正人
(たなか・まさと)

内坂庸夫(うちさか・つねお

1967年生まれ。第1回日本山岳耐久レース(ハセツネ)の優勝者。その後プロアドベンチャーレースチーム「EAST WIND」を率い、世界各地のアドベンチャーレースで活躍。ハセツネCUP安全走行講習会をはじめ、各種のトレイルランセミナーを実施している。
http://www.east-wind.jp/

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