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レース前のコンディショニング。トレーニングや食事はどうすればいい?(PART3)

2022年1月21日

Question
本命レースをベストコンディションで迎えるために、トレーニングや食事で気をつけることは?

Answer
レース当日やレース中の“糖質補給”の際は、アミノ酸「アラニン」と「プロリン」に注目!


回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)


終盤までパフォーマンスをキープ! 「アラニン」と「プロリン」のサプリメントを有効活用

――前回(PART2)は、糖質をしっかり摂取しながら、しっかりとトレーニングを行ってグリコーゲンを効率よく貯蓄できる・運動中に節約できる身体づくりと、レース直前の糖質摂取(グリコーゲンローディング)についてうかがいました。

深野先生(以下F):グリコーゲンをしっかりと身体に蓄えてレースに臨むためには、レース当日の“糖質補給”も重要です。特に肝臓のグリコーゲンは、一晩寝ると約60%程度に減少するとも。前日の食事でグリコーゲンを十分に補充したうえで、さらに当日の朝食で再補充する必要があるんです。

運動開始1~4時間前に1~4g/kg体重(体重60kgの人なら60~240g)が目安とされています。ごはんなどを主食とした朝食をとり、さらにエネルギーゼリーなどを利用してもよいでしょう。(朝食では糖質はしっかりと摂取しますが、脂質や食物繊維は控えめに)

――レース前日までではなく、やはり当日の食事も大事ですね。

F:フルマラソンのように60~90分以上継続して行うスポーツでは、レース中の“糖質補給”も重要です。長時間の運動中は、筋肉はエネルギー源として筋肉のグリコーゲンだけでなく血液中の血糖も消費します。血液中の血糖が減少すると、肝臓は貯蔵しているグリコーゲンを分解して、血糖値を一定に保ちます。

また、長時間の運動時などで体内のエネルギーが不足すると、筋肉のタンパク質を分解して取り出したアミノ酸を肝臓で糖に変換して(血糖)、脳の機能の維持や筋肉のエネルギーとして利用するようになります。

肝臓のグリコーゲンには限りもあります。また筋肉などのタンパク質やアミノ酸を消耗すれば運動を続けることは困難になりますし、血糖値が低下すれば脳のエネルギー不足や筋疲労の原因となってしまいます。レース中の“糖質補給”で血糖値を維持することも、終盤までパフォーマンスをキープするために重要なんです。

――レース当日の糖質補給を効果的に行う方法はあるんでしょうか?

F:レース当日やレース中の“糖質補給”の際に注目したいのが、肝臓などで糖により変換されやすく、エネルギーとして利用されるアミノ酸(非必須アミノ酸)の「アラニン」と「プロリン」です。「アラニン」「プロリン」は、糖質からグリコ―ゲンを作る働きを高めることが報告されていますが、糖質と一緒に摂ると、急激な血糖値の上昇を抑えつつ、血糖値や肝臓のグリコーゲン量を維持しながらも、血糖値の低下を防ぎパフォーマンスを長く維持することが期待されています。血糖値が維持されるということは、エネルギーを筋肉や脳に継続的に送り続けることができるということです。

――エネルギーを使い果たさず、パフォーマンスを長くキープできるということですね……!

F:はい。「アラニン」「プロリン」ともに、筋肉で利用されるエネルギーを作り出すために利用・消費されるアミノ酸です。糖質と一緒に持久運動の前や運動中に補給すると、持久力の維持に役立つと考えられています。

――なるほど! レース前と、レース中に摂取することがポイントだと…。

F:そうですね。朝・昼・夜の3度の食事や補食と合わせて運動前~運動中の糖質摂取のタイミングで、糖質と合わせてアミノ酸のアラニン・プロリンを摂取するのがおすすめです。


●運動中に推奨されている糖質の摂取量は以下のように示されています

・1~2.5時間の持久運動中は30~60g/時間
・2.5~3時間以上の極度の持久運動中は最大で90g/時間
(※アメリカスポーツ医学会のガイドラインより)


ただし、どれくらいの糖質を補給しながらレースに臨むのがよいかは、糖質の種類、糖質の吸収能力、初心者と鍛錬者、走力などのレベル、食習慣などによっても異なるため、ロング走など長時間や強度の高いトレーニング時に使用し、パフォーマンスの違いや「ガス欠具合」をシミュレーションして自分にあったタイミングや量をみつけておくといいでしょう。レースのときだけでなく、練習中にも摂取する習慣をつけておくことも大切です。

また、レースの約1カ月前に30km走で本番のシミュレーションを実践することをおすすめしていますが、ぜひ、サプリメントを含めた食事、補給食等も実際に準備して試してみてください。身体の状態を把握できるのはもちろん、補給食をいつ、どのくらい摂るのか、食べやすさや飲みやすさ、容器の開けやすさ、携帯のしやすさ、携帯する全体量…。レース本番でこれらを把握しているかどうかで、結果に大きく響いてくることがありますからね。

――コンディショニングは一日してならず、そしてシミュレーションは細部まで周到に、ですね……! とても勉強になりました。ありがとうございました!

PART1はこちら
PART2はこちら



《参考書籍・WEBサイト》
・糖質を上手に摂ると、理想とするパフォーマンスをより長く続けることができる!その方法とは?
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/thm05_carbohydrate-supply/

・『アラニン・プロリン配合糖質ミックス』は、糖質のエネルギー利用をサポート。
 持久力が維持されます
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/knw05_alanine/

・スポーツ栄養学最新理論 寺田新 編著(市村出版)
・エッセンシャルスポーツ栄養学 日本スポーツ栄養学会監修(市村出版)
・スポーツ栄養学ハンドブック ダン・べナードット(著)/寺田新(訳)(東京大学出版会)
・理論と実践 スポーツ栄養学 鈴木志保子 著(日本文芸社)
・トコトンやさしいアミノ酸の本(日刊工業新聞社)




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