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免疫力は走ると上がる? それとも下がる?(PART2)正常な免疫機能は「過不足のない栄養摂取」でキープ!

2021年8月20日

Question
練習量を増やし、たくさん走れば走るほど免疫力は高まるのですか?

Answer
いきなり強度の高い運動をしたり、長時間や過度の練習、力を出し切ったレースの後は免疫力が落ちてしまいます。規則正しい生活習慣やバランスの良い栄養摂取が免疫機能を正常に保ってくれます。


回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)


「バランスの良い食事」をとることで免疫機能を正しく働かせる!

――前回はハードなトレーニングが免疫力を低下させてしまうことを知り、目から鱗でした……! レースを目指すランナーとしては、免疫力を低下させやすいレベルの運動をしがちなことを自覚し、コンディションを意識的に整えていかねば、ですね!

深野先生(以下:F):ハードなトレーニングの他にも、ストレスや睡眠不足、不規則な生活、そして食事の面では栄養不足や栄養バランスの偏りなども免疫力を低下させてしまう原因となります。レースを目標にしてハードなトレーニングを行うからこそ、その他の面ではなるべく免疫力を低下するような習慣を減らす…例えば睡眠や休息をしっかりとること、生活のリズムを整えるということ、そして適切な栄養補給がとても大切になってきます!

前回もお話ししましたが、免疫機能は、外部からウイルスや細菌などの異物が体の中に進入してくるのを防いだり、体内に生じた異物などを排除しようとする生体防御システム、でしたよね。
まずは第一のバリアである皮膚や目・鼻・口・喉や胃や腸などの消化管の粘膜によってウィルスや細菌などの異物を体の中に入れないように。
それでも体の中に入ってしまったときは、体の防衛部隊ともいえる、さまざまな種類の「免疫細胞」が互いに連携・協力しあって異物を攻撃・排除するように働いて、体を守っています。

…つまり、粘膜のバリア機能を正しく保つこと、そして様々な種類の「免疫細胞」が連携しながら体の中に入ってきた敵としっかり戦えるような状態にしておくことが大切なんですよ!そのために重要なのが毎日の食事です!

――3食バランス良く食事を摂ること、はまず基本でしょうね……とはいえ、「バランスの良い食事」という言葉は聞き慣れているものの、ついついスルーしてしまいがちです……。

F:忙しいとどうしても簡単に済ませてしまったり、ハードにトレーニングしている方の場合、練習量に対して必要な量のエネルギーや栄養素の摂取をするのが難しい…という声も伺います。ただ、免疫機能をしっかりと働かせるためには、まず日々の活動量や練習量にみあったエネルギーを食事から(場合によっては補食やサプリメントを利用しながら)しっかり摂取すること。そして糖質、たんぱく質、脂質、そしてビタミン(特にA、C、E、D)、ミネラル(亜鉛、セレン等)をバランスよく摂取していくことが大切なんです。栄養素も連携しながら免疫機能に関わっているんですよ!

――なるほど。しかし、いざ聞くと結構たくさんありますよね。うまく摂れるかな?

F:1回の食事でおにぎりだけ、そうめんだけ、といった偏りを避けて、定食形式で摂ることを目標にしてみるだけでもイメージしやすいですよ。つまり、メニューを選ぶ際【主食、主菜、副菜、汁物(+果物・乳製品)】で揃えることを考えてみる。このバランスが整うことで、身体の中で各栄養素が協力し合って機能を発揮してくれます。以下を参考に選んでみてください。


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★主食……食事を抜いたり、主食を控えたりして糖質が不足した状態だと、体の材料でもあり、免疫細胞の材料でもある「たんぱく質」もエネルギーとして利用してしまいます。毎食しっかりごはんやパンなどの主食をとるようにしましょう。穀類の摂取は、糖質だけではなく、不足しがちな食物繊維の補給にもつながります。

食物繊維は腸内環境を整えるのに役立ちます。レース前や運動前後、素早く消化吸収を行いたい場合を除いて(また腹部の膨満感や下痢を起こしやすいといった体質の方や、胃腸の調子がよくないとき等、食物繊維の多い食事を控えたほうがよい場合もあります。)、未精製のもの(胚芽米や大麦配合の米、ライ麦や全粒粉のパンなど)をチョイスすると摂取量をより増やすことができます。

★主菜……身体を作ると同時に免疫細胞の材料となるのが肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などに含まれるたんぱく質!
体が一度に利用できる量にも限りがあるため(たんぱく質量で約20g程度)、毎食の食事で摂取することがポイントです。

さらにそのたんぱく質を構成するアミノ酸のひとつである“グルタミン”は、消化管の腸の粘膜細胞や免疫細胞の主なエネルギー源でもあります。腸管粘膜のバリア機能を維持したり、免疫細胞を活性化するためにも重要です。

また、グルタミンは激しいトレーニングではとくに消耗しやすく、不足しやすくなります。特にハードなトレーニングの前後では体の修復や回復だけでなく、“免疫機能”の面からも、たんぱく質の不足のないように食事をとるように心がけましょう。

★副菜、汁物(+果物・乳製品)……ビタミンやミネラルを野菜やきのこ、果物、乳製品から積極的に摂取しましょう。発酵食品(キムチ、納豆、ぬか漬け、味噌、ヨーグルトなど)、食物繊維(野菜、海藻、キノコなど)は免疫力のカギを握る腸内環境を整える働きをしてくれます。
ビタミンやミネラルはそれぞれ連携しながら働くのでどれも重要な栄養素ですが、その中でもより意識して摂取したいビタミン・ミネラルをご紹介します!

・ビタミンA(主に人参、かぼちゃ、ほうれん草、小松菜、モロヘイヤなどの緑黄色野菜、うなぎやレバーなど)
…粘膜の強化、免疫物質の産生、免疫細胞の活性化などに役立つ。

・ビタミンC(赤ピーマン、ブロッコリーなどの緑黄色野菜やイモ類、キウイフルーツやいちご、グレープフルーツなどの柑橘類)
…粘膜の強化、免疫細胞の産生や活性化などに役立つ。水溶性ビタミンであるビタミンCはランニングで消費されやすく、とりすぎた場合体の外に排出されてしまうため毎食摂取するのがベターです。

・ビタミンD(鮭、さんま、いわし、うなぎ、しらす、卵、きくらげ、まいたけ、しめじなど)
…粘膜細胞の成長を促進したり、小腸粘膜を強化、免疫細胞を活性化させる働きも。日光を浴びることでも体内に生成させるので、リモートワーク&夜ランなどで日の光を浴びてないときには意識的に摂るようにしましょう!

・ビタミンE(モロヘイヤ、かぼちゃ、ほうれん草、アーモンド、ごまなど)
…免疫機能の調整に有効。ビタミンA、Cと協力しながら抗酸化作用も発揮。活性酸素による細胞膜の損傷も防ぐ。

・亜鉛(牡蠣、豚レバー、牛肉、納豆、ホタテ、しじみ、卵黄、アーモンドなど)
…免疫細胞の正常な分化と機能のために必須の栄養素。活性酸素を除去する酵素も構成。

・セレン(豚レバー、かれい、まぐろ、かつお、アジ、鯖、牡蠣、鮭、卵など)
…免疫細胞を正常に維持する、活性酸素を除去する働きあり。


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――なるほど、このグループ分けをざっと頭に入れておけば、意識してバランスを見ながら摂取できそうですね! 最近はテレワークも多いので、レトルトの牛丼とかカレーとか、好物のおかずをまとめ買いして置こうかな。野菜はトマトでも箱買いして……。

F:できれば同じものに偏ったたんぱく質源や野菜の摂取ではなく、さまざまな食材からいろいろな栄養素を摂ることが望ましいです。いろいろな食材を食べるようにすることが、結果的に免疫機能を維持するために必要な栄養素の摂取につながりますよ!

ランニングをしていると必要なエネルギーも、たんぱく質やビタミンなどの栄養素も、何もしていない人と比べて必要な量も多くなります。自身の食事で不足しやすいもの、不足しがちなものはとくに意識的にしっかり摂りましょう。食事からとるのが難しい場合は、補食やサプリメントなどを上手に取り入れてみてください!

一方で、ドカ食いや食べすぎなど(過剰な栄養)も免疫力を低下させてしまう恐れがあるのでご注意を。よく噛んで食べることも、消化・吸収に関わるので大切なことですよ。ちなみに、免疫機能の60~70%は、その消化・吸収の役割の要、「腸」に集まっているんです。次回、その腸のコンディションや腸内の環境を整えることでさらに免疫力をUPさせる方法についてお伝えしましょう!

(PART3へ)

PART1はこちら


※参考文献
・エッセンシャルスポーツ栄養学 日本スポーツ栄養学会監修
・スポーツと健康の栄養学 NAP Limited
・アスリートの腸内環境とコンディショニング(NSCA JAPAN Vol27 No7)
・公益社団法人 日本栄養士会「新型コロナウィルスの状況下、今栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」
・とことんやさしいアミノ酸の本 日本工業新聞社




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