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RUNNERS ONLINE箱根駅伝出場メンバーも 東大院生たちの「限られた時間の中でトレーニング効果を最大限に高める方法」
古川さんは今年の箱根駅伝で9区に出走 |
今年の箱根駅伝では、関東学生連合チーム復路の8区・9区で東京大学の秋吉拓真選手と東京大学大学院の古川大晃選手が襷をつないだことが話題になりました。
学生連合チームには10月の予選会で好結果を残したランナーが選出されますが、実は予選会にもチームで10人以上が「1万m34分以内」という条件をクリアしないと出場できません。そんな条件を長年クリアして予選会に出場し続けているのが東京大学大学院(※大学院は学部生と別チームとして10人そろえる必要があり、昨年10月の予選会に出場した大学院は東大大学院のみ)。近年では古川選手以外にも複数人1万m29分台の選手を輩出するなど、競技力の高さも目を引きます。
なぜ東大大学院のランナーは速いのか、2022年7月の合宿で取材した座談会の内容を掲載します。
※肩書などは当時のもの。
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座談会メンバー
古川大晃さん(博士2年・5000m14分4秒)
加藤泰斗さん(修士1年・5000m15分20秒)
丸山翔太郎さん(修士1年・5000m14分23秒)
鬼頭壮平さん(修士1年・5000m14分48秒)
編集部 近年の東京大学大学院が力をつけている理由を教えてください。
加藤 東大院に来る人は、中学高校大学時代の競技成績に納得していないケースが多いです。大学院は学生として走れる最後の機会ですから、そこでもう一度チャレンジしたいと考えているのではないでしょうか。今年の春にも箱根駅伝に出られなかった筑波大学の卒業生が入学してきました。
丸山 僕もそのひとりで、学生連合チームでの箱根駅伝出場を目指して(東大院に)入学。東大院チームは各自でトレーニングをするので、研究との両立を目指しやすい環境です。
加藤 どのようなアプローチで速くなるかは、基本的に個々に任せられているんですよね。深夜や早朝に走っている人もいますし、自分自身で考えて練習していることが、近年の記録向上の一因と言えるのではないでしょうか。
古川 僕は速くなるためには、ワクワクした気持ちを抱くことが大切だと思うんです。やる気があるのとないのとでは、同じトレーニングをしても効果が全く変わってきますから。
鬼頭 ただワクワクって、しようと思ってできるわけではないですよね。古川さんはどのようにワクワクを競技に生かしているんでしょうか?
古川 まずは月間600~700km走って負荷の高いトレーニングを毎週する、という基本的なことを押さえた上で、本や論文で公開されている面白そうなトレーニングを片っ端から試しています。山を走りたくなって、もっぱらトレイルランニングをしていた時期もあります。
編集部 好奇心を抱いて、いろいろなトレーニングを試すことの重要性が分かりますね。
トレーニングで厚底シューズははきません
編集部 研究とトレーニングを両立させるために大切にしていることはありますか?
加藤 効率的にトレーニングをすることです。以前はポイント練習を速いタイムでこなすことばかりを考えていましたが、その結果、故障が増えてしまった。だから今は毎日のジョギングを大切にしています。フォームを意識しながら、ゆとりを持ったジョギングを繰り返すことで、身体の器が大きくなるのではないかな、と。
丸山 僕はスピード練習の時は厚底ではなく、薄底のシューズをはいています。強豪大学は日々の練習からチームメイトと競い合うので、「周囲が(速く走れる)厚底をはくなら自分もはかなければ」とならざるを得ません。しかし(練習段階での)チーム内競争がない我々は、薄底のシューズで走ったところで何の問題もない。それにより脚筋力が鍛えられる、というメリットがあると考えています(着地衝撃の吸収力が低い薄底シューズは脚への負担がかかる分、筋力の強化につながると言われている)。
鬼頭 僕が重視しているのはセット練習です。スピードを上げた翌日、身体の疲労が残った状態のまま長距離(15km以上)を走ることで、トレーニング効果が1.5倍程度になるのではないかな、と。
古川 僕も最近は市民ランナーが集う練習会で1km×6本などのインターバル走をした翌朝に、16~20kmのジョギングをしています。理由は2つあって、ひとつ目はスピード走の翌日は良いフォームで走れること。ふたつ目は(グリコーゲンが減った状態で走ることにより)脂質代謝が高まることです。この方法は2016年ごろに発表された論文から、スリープロー(SLEEP LOW)法という考え方を参考にしています。
加藤 これまでの話から分かるのは、限られた時間の中でトレーニング効果を最大限に引き出すためには身体への負荷が高まる環境を自らの手で、あえてつくり出すことの重要性ですね。セット練習はその象徴的なものである、と。
編集部 なるほど、「短時間でトレーニング効果を最大限に高める方法」は仕事や家庭を持ちながらトレーニングを行う市民ランナーにとっても参考になると思います。
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