無重力感覚シューズ！アンダーアーマーホバーソニック

3時間40分切りを目指し、月間300km走るランニングライター（56歳）が、
アンダーアーマーの注目シューズを試してみた。

ゆっくり楽しく走りたい、
そんなニーズに応えてくれるシューズ

　長い距離をゆっくり走ること。フルマラソンを完走するうえでもっとも欠かせない練習のひとつ。ゆっくりとはいえ当然疲労するし、長時間だから飽きもくる。でも、どうせ走るなら、楽しく走りたい。そんな市民ランナーのニーズに応えてくれるシューズ、それがアンダーアーマーの「ホバーソニック」だ。“無重力感覚”のまったく新しいクッショニングテクノロジーがそれを可能にしたのだ。

　私は、走り始めて10数年。フルマラソンを中心に年5～6回大会に出ているが、最近は自己ベスト（3時間43分20秒）をなかなか更新できないでいる。まあ、楽しく走る主義で、普段の練習は、季節の移ろいを感じながら、ゆるく長い距離をゆっくり走るという超自己流なので、まあやむを得ないといったところ。それでも今年は、久々の自己ベスト更新を目指そうと、たまには気合を入れてスピード走的なことも取り入れている。

　早速「ホバーソニック」を試してみた。まず、足入れからすべてが心地よい。非常に柔らかく伸縮性のあるニット状のアッパー素材が、足をやさしく包み込むようにホールドしてくれる。そしていつものようにゆっくりラン。「ホバーソニック」は期待以上の快適性能を感じさせてくれた。

大げさではない
“無重力感覚”という名のシューズ

　言うなれば、“ハイグレード車に搭載されている高級タイヤ”といったところだろうか。とにかく乗り心地が良く、どこまでも疲れることなく快適にクルージングができる。そんなタイヤの例えがわかりやすいだろう。キャッチコピーで“無重力感覚”と謳っているゆえ、ふわふわとした走り心地なのかと思いきや、走り始めは決して柔らかい印象は受けなかった。適度な着地感覚でソールがしっかりと路面をとらえ、安定感はある。そして、次の一歩への蹴り出しをソールのトレッドパターンが後押ししてくれるのだ。長時間の苦しく淡々とした長距離ランを、

快適に走り続けることができ、楽しい時間に変えてくれるのだ。
ただ少し気を抜くと、ゆっくり走っているつもりが、知らず知らずのうちにテンポアップしている。自然にスムーズな足運びをサポートするシューズともいえる。私自身、長距離を効率よく走る方法として、体幹を中心に腕の振り、腰のひねり、そして足の蹴り出しと、そのすべてが滑らかな回転運動になるようにと心がけているが、「ホバーソニック」はまさにこの回転運動をより滑らかにしてくれるといった印象だ。これが“無重力感覚”というゆえんなのだろう。

“見た目以上に”快適に走るための機能を満載！

　見た目はシンプルで、カジュアルシューズとして街中で履いてもまったく違和感はなく、ランニングシューズにありがちな、派手なデザインとは相反する方向だ。しかしながら、見た目のシンプルさ以上に各パーツには走るための機能が満載だ。高い通気性と柔軟なフィット感を実現するシームレスに設計されたニット状のアッパー素材や、甲周りを柔らかくホールドするシュータン。あるいは、足首から踵にかけて吸い付くようなフィット感を実現する立体形成のヒールパーツや、着地安定性を向上させるヒールカウンター。そして、“無重力感覚”を実現するホバークッショニングシステム。こういった細部にまで至る機能のひとつひとつの相乗効果が、ゆっくり走って楽しいランニングを実現させてくれるのであろう。

　「ホバーソニック」は、フルマラソンを“最後まで楽しく走って完走したい”そんな市民ランナーに最適のシューズだ。たとえ後半疲れて歩いてしまいそうになるところでも、このシューズならば最後まで歩かずに走って完走できる。そんな期待も持てそうになる。私自身のフルマラソンの勝ちパターンは、最初はゆっくり楽に走り、30キロ過ぎたら徐々にペースアップするというネガティブスプリット。もしかしたら、この「ホバーソニック」は、いま目指している自己ベスト更新のために履くべきシューズなのかもしれない。もちろん序盤のオーバーペースに注意することは言うまでもないが。

（ランニングライター・岩谷隆志）