リレーエッセー 達人たちのトレランコース
毎月トレイルの達人たちがリレーで、独自のトレーニング法や、練習中のエピソードをまじえ、大好きなトレーニングコース(トレイル)を紹介してくれるコーナーです。
田中正人さん

「高尾山~陣馬山コース」

ビギナーには特におすすめ。中上級者も田中式高負荷法で!

今月のナビゲーター: 田中正人/アドベンチャーレーサー

高尾山~陣馬山コース

 高尾山~陣馬山のハイキングコースは、首都圏トレランコースの定番であり、初心者から上級者まで多くの人が走っている。全般的によく整備された登山道で、ハイカーも多く、茶店などもあって初心者でも安心して走れるので、これからトレランを始めたいと思っている人には特に勧めたい。アップダウンが比較的少なく、走力がついてくれば最後まで走りきれる爽快なコースである。上級者はタイムトライアルなども行い、2時間半ほどで走ってしまう。多くの小ピークとその登頂を避ける巻き道が存在するため、巻き道を多用して楽に走ったり、全てのピークを踏むように(特に上り坂ダッシュ)すれば高負荷トレーニングも可能。このようにバリエーションに富んだトレーニングができる上、往復コースであることから走力レベルの違う仲間たちと一緒に走りに行く場合にも都合が良いコースである。つまり走力のない人や途中で調子が悪くなったら陣馬山まで行かずに引き返せば、ゴールの高尾山口までにはまた合流することができる。

 このコースは、私が最初にトレイルランニングを始めたコースであり、数年間はこのコースばかりを走って経験を積み、実力をつけた。初めのうちは競技オリエンテーリングの先輩たちに連れられ、かなりいじめられた。ヒィヒィ言いながら一生懸命喰らいついていたのが懐かしい。それでも1年ほど経過すると先輩たちに付いていけるようになり、自分だけ高負荷にして走るようにもなった。水を入れたペットボトルをバックパックに忍ばせたり、巻き道ではなく小ピークを経由したり、登り坂では爪先立ちで太ももを高く上げてダッシュするなど初心者向けのコースでも工夫次第でいくらでも負荷を高められた。

 そんなことをしているといろいろな体験をすることになる。まずは、ハンガーノック。スピードが出せるようになり仲間と競り合うようになると食べることが疎かになりやすい。気がついたときには全身に力が入らなくなりヘナヘナ状態に。こうなると気持ちも折れてしまい、人間なんてこんなに弱いものだったのかと変に感動することもあった。それ以外にも捻挫や低体温症、道迷いといったあらゆるトラブルを初期のうちに経験させてもらった。こうしたトラブルが発生してもそれほど危険なコースではないのが良い。このコースでいろいろな経験を積んでから奥多摩、八ヶ岳、日本アルプスなどにステップアップしていった。いわば私のトレランの原点となるコースなのである。今でも時々走ると初心に戻るような爽快感がある。これからトレランを始めようと思っている人には、まず走ってもらいたいコースだ。

高尾山~陣馬山コース

田中正人さんのトレーニングコースは、LatLongLab「猛レース」で見ることができます。このコースを走ったことのある人は、自分のタイムを登録して、ネット上で田中さんとバーチャルランを楽しめます。実際に走ってみたら、ぜひ登録してみてください。

地図提供:LatLongLab

田中正人さん田中正人/アドベンチャーレーサー

1993年第1回日本山岳耐久レースで優勝したのをきっかけに、レイドゴロワーズ・ボルネオ大会に間寛平チームとして出場。日本人初完走を果たす。その後、8年間勤めた会社を辞め、プロアドベンチャーレーサーに転向。数々の海外レースで実績をつくり、国内第一人者となる。現在はレースに出場する一方で、レースや講習会などの開催運営にも携わっている。

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日本女子トップのオリエンテーリング競技者。トレイルランナー以上に、トレイルをよく走りこんでいる達人ということで、田中正人さんからのご指名です。