リレーエッセー 達人たちのトレランコース
毎月トレイルの達人たちがリレーで、独自のトレーニング法や、練習中のエピソードをまじえ、大好きなトレーニングコース(トレイル)を紹介してくれるコーナーです。
山本健一さん

「山梨県北杜市白州 「日向山」」

山頂からがトレーニング! あえて下りに重点を置くコース

今月のナビゲーター: 山本健一/トレイルランナー

山梨県北杜市白州 「日向山」

 今回僕が紹介させていただく山は、山梨県北杜市白州にある標高1659.6mの日向山です。この山は簡単に登ることができるのに、山頂の景観は3000m級の高山に匹敵するものを持っていて、なんか得した気分になってしまいます。すべてのトレイルランナーが満足できる山だと思っています。そんなわけで僕は高校時代から現在までこの日向山を走り続けています。

 JR中央線の小淵沢駅付近から南の方向に目をやると、甲斐駒ヶ岳の雄姿の左下に、夏でも雪が降ったように白く大きな斜面が見えます。これが日向山です。今回は矢立石登山口(1120m)から山頂に立ち、錦滝に下るコースを紹介します。

 登山口まではマイカーか長坂駅からタクシーを利用するといいでしょう。国道20号「道の駅はくしゅう」から約7kmくらいです。甲斐駒ヶ岳黒戸尾根の登山口の竹宇駒ヶ岳神社からも走り始めることができます。

 さてコースを走ります。本当にあっという間に山頂に着いてしまいます。僕はいつも友だちと話をしながら走って約30分くらいです。矢立石からだいたいの高度が標識により10等分されて飽きることなくトレイルランナーを山頂まで導いてくれます。山頂まではカラマツ林、クマザサが中心で、コースはすっきりしていて走りやすいです。1カ所だけ下るところがあり、そこをすぎると山頂です。いきなりまぶしいほどに明るい白い砂浜に飛び出します。海岸かと思うくらいです。その景色の変わりように毎回感動しています。これは花崗岩が風化したもので、白砂と丸みをおびた岩は日向山の象徴になっています。正面には八ヶ岳連峰、眼下にはサントリー白州蒸留場が見えます。

 さぁ、僕の場合はここからがトレーニングなのです。山頂までの道のりはウォーミングアップです。この山頂は下山道の方面へ行くと、さらに広い白砂地帯になっています。斜度は25度以上あるでしょう。ここを坂道ダッシュするのです。10本くらいやるとくたくたになります。足下は砂場の砂のようにうまり、足首の細かい筋肉を刺激してくれます。仲間と来るときはあまり行いませんが、ひとりで来るときは、このような新鮮な景色の中で、坂道ダッシュを繰り返します。

 十分にトレーニングした後は、楽しい下りです。それでも20分くらいで終わってしまいます。ルートは錦滝方面へと進みます。かなりテクニカルで、気を抜くと危険ですので、集中していかないといけません。途中、垂直鉄製ハシゴ(40段)が「気をつけろ!」と言わんばかりにコース上で番を張っています。ここを過ぎれば錦滝が眼下に見えてきます。暑いときはこの錦滝は絶好の水遊び場です。ほてった身体を冷やしてくれます。そして、ラストは林道15分ジョグ。滝で濡れた衣類を乾かしつつ、身体もクールダウン。かなり効率的なルーティーンで終了です。

 このコースは本当にお手軽なので、甲斐駒黒戸はちょっときついかな、とか時間ないけど山を走りたいな、とか現実逃避したいな、といったときなどにおススメできます。ただし、一部険しい場所を含んでいる山なので、当然日帰り山行に必要な装備は持って行くべきだと思います。また付近には温泉もあります。ただ、僕はこの山の場合、滝のシャワーで終了ですが。

*2万5千分の1地形図は「長坂上条」をご利用ください

山梨県北杜市白州 「日向山」

山本健一さんのトレーニングコースは、LatLongLab「猛レース」で見ることができます。このコースを走ったことのある人は、自分のタイムを登録して、ネット上で山本さんとバーチャルランを楽しめます。実際に走ってみたら、ぜひ登録してみてください。

地図提供:LatLongLab

山本健一さん山本健一/トレイルランナー

山梨県出身。高校時代は山岳部に所属しインターハイで優勝。大学ではフリースタイルスキーに熱中。現在は高校の体育の教師として山岳部の顧問を務め、夏はトレイルラン、冬はスキーと八面六臂の活躍をしている。2008年の日本山岳耐久レースで優勝し、一躍注目を集める。2009年はツールドモンブランに挑戦し、8位と健闘。これからの活躍がますます期待されるトレイルランナー。

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次回のナビゲーター:08年OSJトレイルレースシリーズ優勝、同じく日本山岳耐久レースでは40歳以上の最高記録を更新した渡邊千春さんです。山本健一さんからのご紹介です。