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RUNNET TRAIL コース

「新潟県 越後三山縦走コース」 標高差1800m超。1700~2000m級の3つの山をつなぐ

松永紘明
「新潟県 越後三山縦走コース」
標高差1800m超。1700~2000m級の3つの山をつなぐ

今月のナビゲーター:松永紘明/トレイルランナー

「新潟県 越後三山縦走コース」

 山を縦走するだけでなく、すべての移動を自力でやりたいと思い、自宅を出てから帰るまで、すべてを自転車かランで走ると決め、越後三山(越後駒ケ岳、中ノ岳、八海山の総称)を縦走することにしました。実行したのは2008年11月。自宅から登山口までは、自転車で片道約2時間、往復4時間の自転車移動を計算に入れて計画を立てたのです。

 朝8時、自宅を自転車で出発。10時に湧き水がたくさん出ている越後三山森林公園に到着。ここで自転車を置きました。
 そこから水無川沿いを走って、15分ほどかけて越後駒ヶ岳登山口に到着。このあたりは、「魚止めの滝」という、でっかい滝があります。川の両側には、駒ヶ岳と八海山までそびえる大っきい、大っきい壁が立ちはだかっています。黄と赤がとても鮮やかな紅葉。そして青い空。気持ちが最高に盛り上がり、何度も雄たけびをあげながら進みました。

 駒ヶ岳へ導くグシガハナの急登は、2000メートル付近まで一気に上がります。左手に見える駒ヶ岳の峰はうっすら雪化粧しています(08年11月)。そしてさらにその左手に見えるのは八海山です。
 昼近くになり、左は駒ヶ岳、右は中ノ岳の分岐に到着。パックされた雪が数十センチ。時折、足首ぐらいまで雪にもぐってしまいますが、これはまだまだ浅いほうです。時刻はちょうど正午。駒ヶ岳頂上には行かず、さらに先に進むことを心と身体が自然に選びました。カーボショッツを補給してすぐ出発です。

 中ノ岳までのトレイルは、稜線の上。右は登ってきたグシガハナ、左は足元に壁。その先にはどこまでも落葉した森が続きます。トレイルには雪があり、中ノ岳に近づくにつれ、急な登りの段が雪で埋まっていたので、シューズで岩のちょっとした窪みを蹴り、窪地を作ったり、笹につかまったり……かなり慎重に進みました。

 雪をかぶった山の稜線にただひとり。ここまでも、そしてこれから先も、人の気配はゼロ。あるのは、動物の足跡だけです。戻るにも戻れない、進めるかどうかも分からない。日常ではなかなか味わえない真の”恐怖”です。ひとりで標高2000メートルを超える山に行くと、時に襲ってくるのがこの感覚です。今でもこのときの越後三山縦走コースが、この感情をどう扱えばよいのかを教えてくれたような気がします。恐怖から逃げるのではなく「じたばた抵抗しないで、じっとその恐怖を見つめる」。すると、スーッと心と身体の緊張が解け、力が抜けて、身体の中から別の力が、じんわりと湧いてくる。そんな感覚が初めて味わえたこのコースは、とても思い出深いコースです。

 こうして1時半ごろ、中ノ岳の避難小屋に到着。避難小屋脇から八海山へトレイルが伸びています。雪に覆われていましたが地図とコンパスで等高線や登山道の方角を確認し、ここでまたカーボショッツを補給し、すぐに動きました。ここから沢までは、トレイルがボブスレーコースのようにえぐれていたので、走るというより、ガンガン滑っていきました。沢で思いっきり冷たい雪解け水を口に含み、前を見ると、そこには土と岩のトレイル。雪はほとんどありません。
 しばらくして関門ノ滝というこれまたでっかい滝。山のこちらと向こう側。何もないとはいえ、直線でも数キロの距離があるにもかかわらず、ゴーゴーと水が落ちる音が聞こえてきました。このあたりも、腰から胸あたりの大きな段差があり、鎖場が幾度となく出てきます。でももう雪はありません。温かい日差しで、ほんとうに気持ちいい。冷静に、かつ身体が動く限りのペースでどんどん進みました。

 荒山山頂で、初めて足元の案内に八海山の字を目にし、雄たけびをあげました。見覚えのある山の形。どんどん八海山が近づいてきます。入道岳山頂に着いたとき、目と鼻の先には岩場の八峰。初めて里が足元に見えました。奥には見慣れたスキー場のロープーウェイ。

 岩場下の迂回路近くまできて、初めて人の足跡を見つけたときは、うれしかった! 午後4時ごろ、何度も何度も来たことがある、千本檜小屋に到着。ここまで来れば、もうホームに帰ってきたも同然。とはいえ、もちろん気を引き締めながら、夕日の中をどんどん下ります。途中の水場で水を飲みましたが、もうさっきの雪解け水の冷たさではありませんでした。帰ってきたのです。

 4時半ごろ、スキー場手前で、大倉口への分岐に到着。ヘッドライトを頭に着け、座って補給をし、冷静に、でも気合を入れて雄たけび。ここからは常に雄たけび。森が次第に暗くなってきて、様々な動物(!)に自分の存在をアピールしながら進みました。徐々に里の光が近づいてきました。車のヘッドライトも見えてきました。里まで戻ってきたのは午後5時過ぎ。ここで自宅で待つ妻に電話(これは大事!)。すぐにそこから自転車を取りに水無川沿いを上流へ走りました。
 行きに飲まなかった湧き水を自分へのご褒美として、そして自宅まで自転車に乗るために補給。1時間半後。夜7時半ごろ、自宅へ到着。家を自転車でこぎ出し11時間30分後のことです。ほんとうにやりました! ちょっとウルウル。

 ちなみに、このときは、初雪直後でしたが、この時期は絶対にお勧めはしません。あくまでも自己責任でお願いします。

新潟県 越後三山縦走コース
松永紘明さんのトレーニングコースは、LatLongLab「猛レース」 で見ることができます。このコースを走ったことのある人は、自分のタイムを登録して、ネット上で松永さんとバーチャルランを楽しめます。実際に走ってみたら、ぜひ登録してみてください。

地図提供:LatLongLab

松永紘明

松永紘明/トレイルランナー


留学、海外旅行のサポートなどを手がける海外体験サポートサービス(アイラブイングリッシュ)代表(http://www.iloveenglish100.com/)。また、トレイルランニングの講習会やイベント、レースの企画運営を行うトレイルランナーズ(http://www.trailrunners.jp/)代表。08年OSJおんたけ100キロ総合4位、08年ケプラーチャレンジ総合8位、09年赤城山トレイルレースロング総合5位、09年キングオブ志賀野反総合3位。

次回のナビゲーター:山本健一さん
08年のハセツネで優勝! 09年OSJ志賀高原・野反湖トレイルフェスティバルで総合優勝の山本健一さんです。松永紘明さんからのご紹介です。

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