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RUNNET TRAIL コラム

イメージを追い求め、富士登山競走優勝

横山 忠男 さん
第12回
富士登山競走(2008年・山頂コース)優勝

横山 忠男 さん

身体と相談し体調管理を万全に

 横山さんの勤務スケジュールは、とてもハードなものだ。週ごとに勤務形態が変わるため、夜勤の週は思うようにトレーニングができない日も、たびたびある。土日祝日は完全休暇とはいえ、体調管理には特に気を配っているとのこと。
 トレーニングは、仕事に合わせて週単位で考える。山での長い走り込みは週末に行い、平日はランニングの他に、スポーツジムでの補強やロードバイク、スイムなどを取り入れている。
「以前、ショートのトライアスロンをやっていたことがあって、スイムは自己流なんですけど。自転車もよく乗ります」
 平日5日間のうち、3日は15〜20kmのランニング。ロードを20kmジョギングしたり、余力があるときは上りと下り往復で約40分のトレイルを走って、短時間で強度を上げたりと、日によって変化をつけている。あとの2日は、スイムの場合はイーブンペースで2〜3km、ロードバイクなら40〜50km 走り、暖かくなった最近では赤城山のヒルクライムも入れる。スポーツジムでは、斜度をつけたトレッドミルやステップマシーンなどを中心とした補強トレーニング。週末は土日のどちらかにホームグラウンド、桐生の吾妻山(標高481m)へ。3時間で30kmほどを、ミドルペースでじっくり走り込む。
 いつ何をやるかはほとんど決めずに、気分や体調によってその日のメニューを決めているという。
「20代の頃はトレーニングをきっちりと決めて、ノルマのようにやっていました。でもそういうのは気持ちが乗らないと全くダメなんですよね」

2008年の富士登山競走は体調不良の中でもあきらめず、終盤に逆転劇を演じた

2008年の富士登山競走は体調不良の中でもあきらめず、終盤に逆転劇を演じた

あくまでベースは普段通り

 レース前でも、トレーニング内容をさほど変えないという。2008年の富士登山競走直前のトレーニングも、
「2、3カ月前は普段と変わらないトレーニング内容でした。事前の試走は3回。馬返し(山道が始まる11km地点)から山頂まで、あまりタイムにこだわらずに身体を慣らしました。1カ月半前あたりから、ロードを意識した坂道のトレーニングを週1回。富士登山競走はロードの走力も重要なんです。総距離の半分は、ロードですからね」
 富士登山競走の山頂コースは、スタートの富士吉田市役所から、ゴールの富士山山頂までの約21km。そのうちロードが約11kmと、コースの半分を占めている。レース10日前からは練習量を落として、距離は短く、スピードを意識したトレーニングにチェンジ。山でのトレーニングも、距離が短い往復コースで行った。レース当日は「五合目でやめようと思った」と言うほど体調が芳しくなかったものの、先行する選手のゼッケン1番(前年優勝者)が目に入り、気持ちが持ち直ったそうだ。そして、粘って見事に1位でフィニッシュ。
「優勝は拾った感じです」
と、控えめに振り返る。

2008年の富士登山競走は体調不良の中でもあきらめず、終盤に逆転劇を演じた

2008年の富士登山競走は体調不良の中でもあきらめず、終盤に逆転劇を演じた

身体が記憶する いいイメージ

 常に念頭にあるのは、トップ争いに絡むようなレース展開。そのせいか「普段のランニングも、自然とペースが速くなってしまいます」と言う。なかなか、楽しみながらとはいかないようだ。
「いい走りができたときの感覚は、身体が覚えています。イメージはなくなりません。その走りを追い求めてトレーニングしています。いい走りのイメージに近づいたとき、面白さを感じます」
 トレーニングにかかわらず、何かを習得するときにはイメージが大切だ。それも「こうなりたい」という、いいイメージ。横山さんは、そのイメージと感覚を追い求めることが、何より大事だという。
 また、休養もトレーニングのひとつと考えて、気持ちが乗らない日は軽く切り上げるか、まったく何もしない日もある。「そういう時は脳も疲れているから、リラックスすることも、トレーニングには大切です」と、決して無理はしない。

世界の強豪が集まるキナバル国際クライマソンでも、2008年に3位入賞

世界の強豪が集まるキナバル国際クライマソンでも、2008年に3位入賞

トレイルとロードはバランスよく

「トレイルを走ることで、一番は心肺機能が鍛えられて、ロードでも後半の持ちが良くなると思います。腰が落ちずに走り切れて、フォームもバランスも良くなると思います」
 トレイルでは一方向のみの動きだけでなく、上下、左右といった複雑な動きがある。特に下りは、身体のバランスを養うことができ、体幹の安定につながる。ただ、トレイルだけではスピード感が鈍ってくると思っている。
「トレイルでは、バランスや安定感が養われます。でも、起伏があるのでスピードを一定に保ちにくく、スピード感がなくなりがちです。そして、走りがトレイルに合わせて、小さくコンパクトになりやすいので、ロードをしっかり走ることも必要だと思います」
 月に数回、トラックを走るようにしている。のびのびと、思いっ切り走るためだ。トレイルとロードの特長をうまく捉えてミックスし、トレーニングに生かしている。スイムなども取り入れたバリエーショントレーニングと、追い求めるいいイメージ。それが横山さんの強さの秘訣なのかもしれない。
 今も、自分に合ったトレーニング法を模索していると言うが、とても研究熱心だ。
「前に、マクロビオティックがいいと聞いて実践してみたんです。健康にはなりましたが、何だかパワーまで落ちてしまって。気力も落ちていくようで、ちょっと僕には合わなかったですね」
 良さそうなものを、まずは実践してみる。そういったポジティブな姿勢が、強くなるためには必要だと信じている。

※『1冊まるごとトレイルランvol.4』(2009年5月22日)掲載のものをそのまま転載しています

 2009年7月はイタリアのトレイルレースにも出場。途中立ち寄ったスイスで「スイスアルパインマラソンダボス」の会場にも駆け付けた(写真左から3人目)

2009年7月はイタリアのトレイルレースにも出場。途中立ち寄ったスイスで「スイスアルパインマラソンダボス」の会場にも駆け付けた(写真左から3人目)

横山 忠男 さん

横山 忠男(よこやま・ただお)


1970年生まれ。群馬県前橋市在住。中学、高校と陸上部に所属。社会人になってから出場した山田昇杯をきっかけに、トレイルの世界へ。数々のレースに出場し、一躍トップクラスのランナーに。2008年には富士登山競走で優勝を飾り、キナバル・国際クライマラソンでも3位に入賞した。
取材・文/須藤ナオミ
写真/松岡幸一、フィールズ、本誌編集部
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