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RUNNET TRAIL コラム

走る鍼灸師のトレラン指南 トレランを安全に楽しむコツ!

  • 第3回:
  • 吉川さんの失敗談に学ぶ トレイルの危険回避術

不整地を走るトレイルランは、大自然を満喫できる反面、危険も伴います。
不測の事態を招かないためにも過信や無理は禁物。念には念の計画性も重要です。
とはいえ、何事も経験から学ぶことも多いもの。
そこで、吉川さんの失敗談から危険回避の方法を教えてもらいました。

脱水、ハンガーノック

普段はあまり持たないアメ玉で息を吹き返した

原因/脱水、エネルギー枯渇状態
症状/頭痛、吐き気、めまい、ケイレインなど

以前出場した日本山岳耐久レースでのことです。スタート直後の約11km地点でハイドレーションが破れてしまうというアクシデントに見舞われました。完走狙いに切り替えてレースを続行しましたが、夜になると脱水症状の典型的な症状である頭痛、吐き気、痙攣が襲ってきて、ようやくたどり着いた第2CPでは食べ物はもちろん、水分も受け付けない。いよいよ最悪の状況に。
さらに追い打ちを掛けたのがハンガーノック。糖分の枯渇により、脳が身体にストップを掛けてしまい動けなく(動きたくなく)なる始末。そんなとき、家内が友人に配るべく持っていたアメ玉を偶然持っていたことに気がつきました。普段はあまり持たないのですが、このときばかりは救世主。アメ玉の糖分が脳に刺激を与えてくれ、重くなった身体を引きずるように何とかゴールできました。このような事態を未然に防ぐためにも、ジェルや糖質を携帯する重要性を改めて感じました。

過度の冷え(ケース1)

過信が招いた過度の冷え

原因/疲労、濡れ、冷え、風
症状/震え、幻覚など

7年ほど前、現在では富士登山競走を3時間9分で完走する走力を持つほどの友人に山案内を頼まれた11月末のこと。雨が降り始めて間もなく「少し疲れてきた」と友人が言いました。「エスケープしようか」と下山を勧めましたが、とりあえず山小屋を目指すことに。すると山小屋に着いた途端に震え始め、着替えと食事を済ませて山小屋を出たところで嘔吐。「これはマズイな」と。手を貸して下山を始めたら、何もないところで「岩がある」と岩を避けるように飛び跳ねるなど、すでに幻覚症状が始まっていました。本来1時間で下れる距離を4時間かけて下山し、お風呂に入って事なきを得ましたが、本当に危なかったのです。
そのコースは都県境でエスケープルートに乏しいのですが、今思えば、最初の異変を感じたところでしっかりとエスケープすべきでした。つい彼の走力を過信していました。

過度の冷え(ケース2)

装備不足で過度の冷え

5年前の5月。複数人で2000m前後の山に入ったとき、走力別に前後の集団に分かれてしまったんです。前を行く2人が後続の到着を待っていたのですが、その間に身体を冷やしてしまいました。「これはマズイ」ということで、すぐに2人はサバイバルシートを羽織り、なんとか最悪の事態を回避できました。
また後続から追いついて来たランナーはロード経験の割にトレイル経験が少なく、持参したアウターが防寒性に乏しかったり、インナーの機能性が低かったりしたことで、すっかり身体を冷やしてしまい、危機一髪の状況でした。天候や距離によって冷えの危険性は変わるので、的確な状況判断や細心のウエアセレクトは欠かせません。


涼を求めて夏場のトレイルは水分補給量に要注意!

夏場に30kmほどのロングトレイルに出かけるとき、私はハイドレーション3リットルに500ミリリットルのペットボトルで合計3.5リットルの水分を持っていきます。途中の給水場で満タンに給水するので、全部合わせると6~7リットルの水分を摂取する計算になります。とはいえ、個人差もありますが、夏場の発汗量を考えるとそれでも足りないくらいです。
 そんなときに必ず行いたいのが事前の水場チェックです。季節によって潤沢だったはずの水場の水が枯れていた……なんていうことも十分に考えられます。例えば次の水場までは2時間という事態になれば、危険この上なし。脱水症状を甘くみてはいけません。気をつけましょう。


トレイルランナーの大敵 ねん挫を防ぐ簡単テーピング術

簡単に効果が得られる

テーピングを縦1/2に均等にカットすることで両足に使える。
長さは15cm程度。足を浮かせ、小指を下に向けて足首を内反させた状態で、
小指の付け根からくるぶしを巻き込むように腱に沿って貼る。


少しかっちり固定したいとき

まず、テーピングを8㎝ほどの長さにカットして3枚準備する。
次に足裏を床につけた状態で、足首を捻ったときに比較的伸ばしやすい
外足靭帯を包み込んでカバーするように貼り重ねていく



吉川 直人

指導/吉川 直人(よしかわなおと)


教員を経て青梅に緑風堂鍼灸院を開業。マラソンやトレイルラン、トライアスロンを実践する「痛みを知る」鍼灸師。フル自己ベストは2時間57分。
緑風堂鍼灸院HP: http://ryokuhudo.petit.cc/


※2012年月刊ランナーズ5月号別冊付録『レースから始めるトレイルラン』(2012年3月22日)掲載の記事を転載しています。
写真/中島健一